ねこの夢

読んだ本の備忘録として。。。

カテゴリ:「や行」で始まる作家 > 山本一力

銀しゃり[文庫] (小学館文庫)
山本 一力
小学館
2009-07-07

¥771
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (21件のカスタマーレビュー)
寛政の江戸深川に「三ツ木鮨」を構えた鮨職人・新吉は
親方から受け継いだ柿鮨(こけらずし)の味と伝統を守るため、
日々精進を重ねていた。
職人の誇りをかけて、満足のいく仕事をする。
それが新吉の信条だったが、
ふとしたきっかけで旗本勘定方祐筆・小西秋之助の知己を得る。
武家の借金を棒引きにする「棄捐令」に思い悩む秋之助と新吉に、
互いの生き様を通して生まれる男同士の信頼感。
住む世界が異なっても、
そこには仕事に命を燃やす男たちの熱い心意気があった。
長屋に暮らす仲間たちと織りなす笑いあり涙ありの人情に、
心温まる時代小説。

(内容紹介より引用)




ラストに喜びがじんわり沁みてくる1冊でした。

時代は棄捐令が発布された頃で、
主人公の新吉が27歳と若いせいか
ストーリーにも勢いを感じました。

鮨職人といっても、
当時は握り寿司は屋台でつまむものなので
新吉の作るお鮨は押し鮨です。
甘く煮た椎茸、かんぴょうに錦糸玉子をちらし、
昆布締めした鯛のお刺身やあわびをすし飯と木型にぎゅっと!
おいしそう~!^^

のれん分けした自分の店を盛り上げるために
日々の努力と工夫を怠らない新吉の姿は
とても清々しいです。

棄捐令後の江戸に吹く不景気の中、
知り合った武士・小西から
すし酢に使うお砂糖を減らすための工夫を教わる。
それは柿酢、柿の皮をお酢に漬ける・・・。

山本一力さんの書く時代物は
物の価値や重さ、大きさ等を
作中で現代の単位だとこのぐらい、と
書いてくれるので私でもわかりますw

幼なじみを襲う悲劇も
希望を捨てず信じることが大切だと
新吉が教えてくれるようでした。
よかったです!

あかね空 (文春文庫)
山本 一力
文藝春秋
2004-09

¥691
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (58件のカスタマーレビュー)
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。
己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。
やがて夫婦となった二人は、
京と江戸との味覚の違いに悩みながらもやっと表通りに店を構える。
彼らを引き継いだ三人の子らの有為転変を、親子二代にわたって描いた
第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。

(内容紹介より引用)




苦しかった・・・
中盤以降、あまりに苦しくて
何度本を閉じてしまおうと思ったことか。

誰か一人の主役がいるわけではなく、
京から来た男・永吉と江戸っ子の娘・おふみが出会い、
永吉が京風のお豆腐(今でいう絹ごし豆腐)を売る店を始め
おふみと夫婦になり、子を授かり、
二人が人生を終え、子供たちに代替わりするまでの物語です。

実の親子でありながら
心を通わせられない母と子供たち。
出産が命がけだった江戸時代に
3人もの元気な子供を授かりながら
長子・栄太郎にしか愛情を示さない母・おふみ。

何故、栄太郎だけを溺愛するのか。
おふみなりの理由があるのだが、
それは本人にしか理解できない、というか
他の人にしたら単なるこじつけのようなもの。

店のお金を使い込み、博打にのめり込み借金を作る栄太郎。
それでも「栄太郎は悪くない」と擁護する母。

この物語を読後感良かったといえる読者が羨ましい。

例え、ラストに未来が見えたとしても、
悟郎とおきみにとっては、
慕っても慕っても、邪険にされ暴言すら吐かれ、
決して優しさも温もりも与えることのなかった母だ。
理由を明かされ、哀れだとは思っても
全てを水に流し心底許せることができるのだろうか?
そして、嘘を重ね何度も家族を裏切った栄太郎を
この先信じていくことができるのだろうか?

家族それぞれの立場で違う想いが噛み合わない。

はぁぁ~ 胸が苦しい。

損料屋シリーズに出てくる深川の料亭・江戸屋と
その女将・秀弥がここにも登場していました。
同じ作家さんならでは、ですね。

5
だいこん (光文社文庫)
山本 一力
光文社
2008-01-10

¥987
おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (18件のカスタマーレビュー)
 
江戸・浅草で一膳飯屋「だいこん」を営むつばきとその家族の物語。
腕のいい大工だが、博打好きの父・安治、
貧しい暮らしのなかで夫を支える母・みのぶ、
二人の妹さくらとかえで――。
飯炊きの技と抜きん出た商才を持ったつばきが、
温かな家族や周囲の情深い人々の助けを借りながら、
困難を乗り越え店とともに成長していく。
直木賞作家が贈る下町人情溢れる細腕繁盛記。

(内容紹介より引用)




涙する感動巨編ではないけれど、これ、すっごい好き!
文庫の厚さが2センチ超える大長編ですが
おもしろくてサクサク読めます。

鰯の甘辛煮(生姜入り)と白いご飯が食べたくなる~。
空腹時に読むべからず(笑)

主人公は三人姉妹の長女・つばき。

たぶん・・・だけど、
このつばきの考え方や人生を見て
「何なの?押しつけがましい」って感じる人もいると思う。
母親代わりになってくれなんて頼んでない、とかね。
でもさ、
子供より博打好きの夫が最優先!
家にいるより外で働くのが楽しい、という母親だったら
長女が妹たちの世話も家事もしなきゃ仕方ないじゃん。
つばきは、そうやって生きてきたんだから
少しくらいの自負持たせてあげてよ、ね。

この物語は、26歳になったつばきが
新しい自分の店を深川に普請したところから始まります。
地回りのやくざが挨拶に来いという・・・。
行ってみたら相手は、
かつて父親を博打に誘い借金を背負わせて取り立てた男だった!
お互いに驚きつつ、複雑な心境の二人なんですねw

そして、つばきは過ぎてきた時間を回想する。。。

ずっと、なんとかしてお金を稼がなくちゃ!と思っていたつばきは
自分の炊くご飯は、母親が炊くよりおいしいということに気づき
わずか9歳で町火消しの番小屋で母と二人で賄いに雇われる。
そこでの給金を母がきちんと貯めていてくれた!
そのお金でつばきは17歳という若さで
初めての自分の店を浅草に持ったのでした。

お店の名前は「だいこん」
定食屋さんみたいなものですね。
ご飯と漬物と鰯の甘辛煮が人気メニュー。
大工の父親以外、母と三姉妹全員でがんばります。

江戸の町では商売敵からの嫌がらせだけでなく
火事や大水、天候不順も商いの大きな災難になる。
つばきの機転で何度もくぐり抜けていく。

父親に賭け事の才能はなかったけどw
つばきには料理の他に商才もあったんです。
そして、妹たちの嫁入りのことまで気にかける。

でも家族の誰一人として、つばきの嫁入りのことは気にしてない。
それに気づかないくらい鈍感だったら、ある意味幸せなのかもしれない。
生憎つばきは気づいている。
そして、たまらなく寂しく思う時がある。
もし違う生き方を選んでいれば・・・
もし違う家に生まれていれば・・・

そんな感傷もあるけれど、明るいんです。
やっぱり家族が大好きで大切なんです。
ラストも未来を感じさせます。
きっと深川の「だいこん」も繁盛することでしょう。


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