ねこの夢

読んだ本の備忘録として。。。

カテゴリ:「は行」で始まる作家 > 藤原伊織

前に感想文を書いた「てのひらの闇」
の続編であり、
藤原伊織氏の長編遺作です。

「名残り火 てのひらの闇Ⅱ」  文春文庫  2010年6月発行

藤原伊織  (Fujiwara  Iori)

飲料メーカーの宣伝部課長だった堀江の元同僚で親友の柿島が、
夜の街中で集団暴行を受け死んだ。
柿島の死に納得がいかない堀江は詳細を調べるうち、
事件そのものに疑問を覚える。
これは単なる“オヤジ狩り”ではなく、
背景には柿島が最後に在籍した流通業界が絡んでいるのではないか――。
著者最後の長篇。解説・吉野仁

(BOOKSデータベースより引用)




前作「てのひらの闇」から数年後の設定。

登場人物や時間経過が繋がっているので
出来れば順番に読むことをお勧めします。
もちろん、こちらだけ読んでも十分堪能できると思います。

20年来の友人が理不尽な死を遂げる。
中年になっても親友は親友なのだ。
20年、決して短くはない時間を共に歩んできた。

藤原伊織さん、あなたの書く中年はとてもカッコイイです。
私も同じ世代、でも遠く及ばない。
惜しいなぁ、ほんとに。
これが遺作だなんて。

ハードボイルドでありエンターテイメントだと思う。
青春のほろ苦さとは別物の大人のほろ苦さがある。

ぐっと呑み込んで自分の胸の中に納めておけるのが大人なんだろうけど
堀江も柿島の妻・奈穂子もはじける・・・!

途中の謎解きがもどかしく感じるくらい
結末が気になってものすごい勢いで読んでしまった。
過去のある大人じゃないと出来上がらない物語、とでもいうのかな。
「ほんわ和む」雰囲気とは対極にあるけど心に沁みます。

名残り火―てのひらの闇〈2〉 (文春文庫)/文藝春秋


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「テロリストのパラソル」しか読んでなかった作家さんです。


「てのひらの闇」  文春文庫  2002年11月発行

藤原伊織  (Fujiwara Iori)

飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、
会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、
これを広告に使えないかと打診されるが、
それがCG合成である事を見抜き、指摘する。
その夜、会長は自殺した!! 
堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、
その死の謎を解明すべく動き出すが……。
解説・逢坂剛

(BOOKSデータベースより引用)




中年のオジサンを格好よく書くのが上手な作家さんだと思います。
「テロリストのパラソル」もそうだったし、
今回の堀江もまた40半ばで、会社から希望退職を促されて
二つ返事で承諾するような覇気のない男で
しょっちゅう二日酔いで出社する。

かつては優秀な広告代理店のディレクターで、
(著者が電通社員だった影響かな?)
その更に以前は・・・???
やたら喧嘩が強いオジサンです。

ハードボイルド、なんでしょうね。
でも、事件の謎も興味深いです。
何があったのか?
会長は本当に自殺?それとも他殺?
1つの謎を追う内に、
自分自身の過去の事件にもぶつかる堀江。

暴力的なことと、企業合併という経済的な事象のどちらも
宙ぶらりんにならずにきちんと収束されてると思いました。

続編が出ているようです。
「名残り火 ―― てのひらの闇Ⅱ」(文春文庫より)

ただ、とても残念なことに
この続編が遺作となってしまいました。
平成19年5月に藤原伊織氏は亡くなられたとのことです。

面白かったので、早速続編を積読本にリストアップしました。

てのひらの闇 (文春文庫)/文藝春秋


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