ねこの夢

読んだ本の備忘録として。。。

カテゴリ: 「ま行」で始まる作家

桜ほうさら(上) (PHP文芸文庫)
宮部 みゆき
PHP研究所
2015-12-17

桜ほうさら(下) (PHP文芸文庫)
宮部 みゆき
PHP研究所
2015-12-17


父の汚名をすすごうと上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、
深川の富勘長屋に住むことに。
母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、
写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、
おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる。
家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、
笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い…。
しみじみとした人情が心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂。

江戸で父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、
三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。
「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが…。
ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。
絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、
上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。
「真実」を突き付けられた笙之介が選んだ道とは…。
切なくも温かい、宮部みゆき時代ミステリーの新境地!

(内容紹介より引用)




文庫になったので、古本待ちするつもりでしたが
我慢できずに結局、普通に購入しました(^^ゞ
宮部さんの時代ものはやっぱり良いです。
表紙のイラストもシンプルで可愛いです。

本筋が1本ある長編ですが
大きく4つの章に分かれています。
<目次>
第一話 富勘長屋
第二話 三八野愛郷録
第三話 拐かし(かどわかし)
第四話 桜ほうさら

この章ごとに本筋の事件とは別の騒動があって
長編を飽きることなくサクサク読めます。

濡れ衣をきせられ、進退窮まった父が切腹・・・
その姿を「無様だ」と言い捨てる兄・勝之介。
ただ呆然とすることしか出来なかった弟・笙之介。
そして、夫をかえりみることのなかった母・里絵。

主人公は弟の笙之介。

武道を重んじる上総国搗根藩において
剣術に秀でたところのない父は、
というより古橋家は代々見過ごされてきた。

しかし、兄・勝之介は違った・・・!
剣術に優れ、出世欲も人一倍あった。

物語が進むにつれ、
やはり父は父親で妻子を思っていたし、
逆に、どんなに心を寄せても
言葉を尽くしても
気持ちの通じない相手はいるものだとわかる。
これは家族だからこそ。
何の関係もない他人なら
あの人はそういう人なんだ、で終わらせることができる。

心の通わない家族ほど、
哀しく辛いものはないかもしれない。

1つの藩の行方を揺るがす謀(はかりごと)もあるけど、
父を亡くし家族が壊れ、
江戸へ出てきた笙之介が信頼していた人たちからも
嘘をつかれていたことがわかった時に
相手を責めつつも自分を情けなく思ってしまう心情が辛過ぎる。

ラストが大団円にはならないけれど、
笙之介が生きる道が残っていたことに希望を。。。


18世紀英国。
愛弟子エドらを失った解剖医ダニエルが失意の日々を送る一方、
暇になった弟子のアルたちは
盲目の判事の要請で犯罪防止のための新聞を作っていた。
ある日、身許不明の屍体の情報を求める広告依頼が舞い込む。
屍体の胸には
〈ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ〉と謎の暗号が。
それは、彼らを過去へと繋ぐ恐るべき事件の幕開けだった。
本格ミステリ大賞受賞作『開かせていただき光栄です』続篇。
解説/北原尚彦。

(内容紹介より引用)




『開かせていただき光栄です』が
ものすごく面白いミステリーだったので
続編が文庫になって即買いでした。

前作から5年が経った設定です。
今回は解剖医のダニエル先生は脇で、
盲目の判事、サー・ジョンが牽引役です。
そして、ダニエル先生のもとを去ったあの二人も・・・。

意外に思ったのは当時、大陸のフランスには
現代の警察に当たる組織が既に機能していたのに
舞台となるイギリスにはまだ無かったということ。

その為、罪を罰する法律は存在していても
全ての人民に平等ではないどころか、
権力者と富裕層に有利な
非常に理不尽なモノだったようです。

前作は事件の謎を解くミステリーとして楽しみましたが、
登場人物たちへの感情移入がある2作目は
理不尽な時代に生きる彼らの哀しみも感じました。

天才素描家ナイジェル・ハートの過去は
「普通」と「普通でない」の区別がつかない世界だった・・・。

さすがに
「この続きはないんだろうな」という印象のラストでした。
できたらもう1作ぐらい読みたい気がするけどなぁ。

読み応えあります。
謎を解くミステリーとしても、
登場人物たちのそれぞれの立場での生き方としても。

ちょっとネタバレ・・・
タイトルのアルモニカ・ディアボリカとは
グラスハープのことでした。
エドがいうようにその音色は
ディアボリカではなくアンジェリカでしょう。


風早の街でひと夏を過ごすことになった少女・瑠璃は、
夢に導かれて訪れた洋館でクラウディアという謎めいた女性と出会う。
彼女は本の修復や造本をするルリユール職人、
どんなに傷んだ本でも元通りにできるという。
ぼろぼろになった依頼人の本を、
魔法のような手わざで綴じなおすクラウディア。
あるいはそれは本当に魔法なのか。
その手伝いをするうちに、
瑠璃のなかに秘められていた悲しみも修復されていく。
本を愛するひとたちの美しく不思議な物語。

(内容紹介より引用)




ずっと読みたいと思っていた物語が文庫になったので。
先入観を持ちたくなくて
あまりたくさんの人の読後レビューは
目にしないようにしていました。

読み終わった直後の一言→なに、この物語!
やられました~。
本好きにはたまらないですね。
風早の街シリーズで好きなのは
「花咲家」と「竜宮ホテル」でしたが、
今回の『ルリユール』きました!(笑)

図書館の司書さんがする本の修理を
家庭での傷の手当てとするならば、
ここに登場するルリユールは名医の手術でしょうか。
いや、やっぱり魔法で
魔法が使えるなら職人さんじゃなくて魔女なのよ~( ´艸`)

「宝島」と「黄昏のアルバム」の章が好きです。
ぽろぽろと泣けてきます。

最後の文庫書き下ろし「春の小函」も
ほーんの少しだけ成長した瑠璃の姿があって嬉しかった!

やっぱり紙の本を買おうと思う。
大切に読もうと思う。
そして、
おばあちゃんになっても
風早の街に立って涙を流す心をもっていたい。

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