父の汚名をすすごうと上総国から江戸へ出てきた古橋笙之介は、
深川の富勘長屋に住むことに。
母に疎まれるほど頼りなく、世間知らずの若侍に対し、
写本の仕事を世話する貸本屋の治兵衛や、
おせっかいだが優しい長屋の人々は、何かと手を差し伸べてくれる。
家族と心が通い合わないもどかしさを感じるなか、
笙之介は「桜の精」のような少女・和香と出逢い…。
しみじみとした人情が心に沁みる、宮部時代小説の真骨頂。
江戸で父の死の真相を探り続ける古橋笙之介は、
三河屋での奇妙な拐かし事件に巻き込まれる。
「桜の精」のような少女・和香の協力もあり、事件を解決するのだが…。
ついに父を陥れた偽文書作りの犯人にたどり着いた笙之介。
絡み合った糸をほぐして明らかになったのは、
上総国搗根藩に渦巻く巨大な陰謀だった。
「真実」を突き付けられた笙之介が選んだ道とは…。
切なくも温かい、宮部みゆき時代ミステリーの新境地!
(内容紹介より引用)
文庫になったので、古本待ちするつもりでしたが
我慢できずに結局、普通に購入しました(^^ゞ
宮部さんの時代ものはやっぱり良いです。
表紙のイラストもシンプルで可愛いです。
本筋が1本ある長編ですが
大きく4つの章に分かれています。
<目次>
第一話 富勘長屋
第二話 三八野愛郷録
第三話 拐かし(かどわかし)
第四話 桜ほうさら
この章ごとに本筋の事件とは別の騒動があって
長編を飽きることなくサクサク読めます。
濡れ衣をきせられ、進退窮まった父が切腹・・・
その姿を「無様だ」と言い捨てる兄・勝之介。
ただ呆然とすることしか出来なかった弟・笙之介。
そして、夫をかえりみることのなかった母・里絵。
主人公は弟の笙之介。
武道を重んじる上総国搗根藩において
剣術に秀でたところのない父は、
というより古橋家は代々見過ごされてきた。
しかし、兄・勝之介は違った・・・!
剣術に優れ、出世欲も人一倍あった。
物語が進むにつれ、
やはり父は父親で妻子を思っていたし、
逆に、どんなに心を寄せても
言葉を尽くしても
気持ちの通じない相手はいるものだとわかる。
これは家族だからこそ。
何の関係もない他人なら
あの人はそういう人なんだ、で終わらせることができる。
心の通わない家族ほど、
哀しく辛いものはないかもしれない。
1つの藩の行方を揺るがす謀(はかりごと)もあるけど、
父を亡くし家族が壊れ、
江戸へ出てきた笙之介が信頼していた人たちからも
嘘をつかれていたことがわかった時に
相手を責めつつも自分を情けなく思ってしまう心情が辛過ぎる。
ラストが大団円にはならないけれど、
笙之介が生きる道が残っていたことに希望を。。。



