ねこの夢

読んだ本の備忘録として。。。

カテゴリ:「あ行」で始まる作家 > 上橋菜穂子

獣の奏者 外伝 刹那 (講談社文庫)/講談社


¥745

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2013年10月発行 

エリンとイアルの同棲時代、師エサルの若き日の苦い恋、息子ジェシのあどけない一瞬……。  
本編では明かされなかった空白の11年間にはこんな時が流れていた!
文庫版には、エリンの母、ソヨンの素顔が垣間見える書き下ろし短編「綿毛」を収録。
大きな物語を支えてきた登場人物たちの、それぞれの生と性。

 
 (内容紹介より引用) 


  

 これは大人の為の短編集、かな。 

 本編の最後に著者自身によるあとがきだけでなく、 
 「人生の半ばを過ぎた人へ」という文章があります。 
 そこそこの時間を生きてきたから思い描けた、というようなことでしょうか。 

 上橋さんの言葉に、この物語は完全なる球体、というのがありました。 
 外伝を読んで納得できます。 

 闘蛇と王獣というモチーフにまつわる物語だけでなく、 
 人々の生きてきた軌跡でもあるのですから 
 この外伝に書かれたことはあって当たり前のことなんですね。 
 でも、あえて外した。 
 完全なる球体にとっては余分な一滴に感じられたそうです。 

 「普通の人」として生きた時間は知らなくてもいい、という読者もいて 
 この外伝については賛否両論あるようです。 
 私は、読んでよかったです。 
 エリン、イアル、エサルたちの体温が感じられました。 

 <目次> 
 「綿毛」  
 エリンの母、壮絶な最期をとげたソヨンの短い母としてのひとこま。 
 ほんの10数ページの小編なのに、母としての幸せに溢れている素敵なエピソードです。 

 「刹那」 
 エリンとイアルの時間。 
 初めての出産を迎えたエリンの側でイアルが回想する・・・。 

 「秘め事」 
 エリンの恩師であるエサルの生い立ちから今に至るまで。 
 一番長い物語。 

 「初めての」 
 エリンが命がけで産んだ息子ジェシと過ごす時間。 
 最初にソヨンとエリン、最後にエリンとジェシ・・・良いです。 

 「獣の奏者」は本編、外伝ともに素晴らしい物語でした。 


5
獣の奏者 3探求編 (講談社文庫)/講談社


¥812

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獣の奏者 4完結編 (講談社文庫)/講談社


¥782

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2012年8月発行

愛する者と結ばれ、母となったエリン。
ある村で起きた闘蛇の大量死の原因究明を命じられ、
行き当たったのは、
かつて母を死に追いやった禁忌の真相だった。
夫と息子との未来のため、多くの命を救うため、
エリンは歴史に秘められた真実を求めて、
過去の大災厄を生き延びた人々が今も住むという遥かな谷を目指すが……。

闘蛇と王獣。
秘められた多くの謎をみずからの手で解き明かす決心をしたエリンは、
拒み続けてきた真王(ヨジエ)の命に従って王獣を増やし、
一大部隊を築き上げる。
過去の封印をひとつひとつ壊し、
やがて闘蛇が地を覆い王獣が天に舞う時、
伝説の大災厄は再びもたらされるのか。

(内容紹介より引用)




2巻目の王獣編から11年の時間が流れた設定で物語が再開しました。

母となったエリンは更に強く聡明になったような気がします。

誰を愛し、誰の子を産んだのか、
読み始めてはっきりわかるまですごい早さでページをめくってました(笑)

3巻目は「探究編」というだけあって
エリンの調査について今まで以上に緻密に記されています。
獣たちの気配や体臭がページから立ち上ってくるような・・・
それほどに圧倒されます。

そして「完結編」へ。
壮大な世界が自分の中に広がっていて
エリンと一緒に過ごした時間が懐かしいと感じてました。

シリーズを読み終わって、自分の中に何かが残ってるんです。
ゴツンとしたもの。
命とは?生きるって?自由って?
人って?獣って?
獣と人と何が違うの?

答えは、自分で探さなければ。。。

使い古された言葉だけど、
どれだけ生きたか ではなくて
いかに生きたか が命あるものの本質を造り上げるのでしょう。

そして後半2冊の装丁も、2冊並べて1つの絵になってます。

2014091909350000 (600x426)

5
獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)/講談社


¥679

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獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)/講談社


¥751

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2009年8月発行

リョザ神王国。
闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、
闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。
母の不思議な指笛によって死地を逃れ、
蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、
母と同じ獣ノ医術師を目指すが――。
苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける!

カザルム学舎で獣ノ医術を学び始めたエリンは、
傷ついた王獣の子リランに出会う。
決して人に馴れない、また馴らしてはいけない聖なる獣・王獣と
心を通わせあう術を見いだしてしまったエリンは、
やがて王国の命運を左右する戦いに巻き込まれていく――。
新たなる時代を刻む、日本ファンタジー界の金字塔。

(内容紹介より引用)




上橋菜穂子さま、国際アンデルセン賞受賞おめでとうございます。

このシリーズはものすごい迫力です。
ぐいぐいと、これでもか!とこちらに問いかけ、迫ってきます。
「守り人」シリーズを先に読むべき、という説に今なら私も納得できます。
先にこっちを読んでしまうと物足りなくなるってホントかも・・・。

シリーズ全4巻+外伝1冊。
全て文庫化されています。(外伝は未読です)

一気に読んでしまったような状態なので、
全4巻が、1と2、3と4ではっきり分かれているのを感じました。
著者あとがきにも、2巻で終わりにしたはずの物語だったとあります。

そこで、感想も1冊毎ではなくて2つにすることにしました。

主人公はエリン。

この物語の世界では、
古くからの因習にとらわれ、外見の違いで人を差別し忌み嫌う・・・
現代の日本に生きる私たちにとっても、なんと身近なことか!

死んだ闘蛇の世話をしていたエリンの母・ソヨンは
何故処刑されなければならなかったのか?
それも、一番惨い方法で。
わずか10歳で母の処刑をみたエリンは、
その後の人生を獣と人との関わり合いに捧げることになる。

闘蛇とは、水陸で生息する生き物。
そして2巻目で登場する王獣とは、空を飛ぶ生き物。
安易に例えれば、龍と鳳凰だ。

生き延びたエリンが出会ったのは新たな獣・王獣。
エリンの生き様が描き出される2巻目。
黙したまま処刑された母と違うのは、
禁忌を守るより、生きて未来を見据えたこと。

エリンの生き方を受け入れられたら、3・4巻目もいけます。
著者の上橋さん自身が文化人類学者だと知ると納得しますが、
エリンの知識欲というか、
何を犠牲にしても「知りたい」と思う強い欲求は学者さんのものかも・・・。
それを身勝手という人もいるかもしれません。
でも、誰かが踏み出さないと!

文庫の装丁もなかなかです。1と2を並べると1枚の絵になります。

2014091909360000 (600x420)


うーん、ちょっとわかりにくいけどw
左側の表紙に闘蛇、右側に王獣が~・・・。

10代から読めると思うので、よかったら親子でどうぞ^^

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